涙のバレンタインデー 青春日記より2004/01
涙のバレンタインデー
毎年バレンタインデーが近づくと必ず思い出す事がある。
それは遥か昔、僕がまだ小学校低学年だった頃の切ない記憶。
バレンタインデーの日、近所に住んでいたツヨシ君が僕の家に遊びに来ていた。
2人で遊んでいると、母親が僕を呼んだ。
「マユミちゃんがチョコレート持って来てくれたよ!」
ドキドキしながら出てゆくと、そこには近所に住んでいた憧れのマドンナ、マユミちゃんが立っていた。チョコレート片手に。
マユミちゃんは「これあげる」と言ってチョコレートを差し出した。
僕はドキドキしていて何も言えず、何も言わず、そのチョコレートを受け取ろうと手を伸ばした。
その瞬間、チョコレートは僕の手をすり抜けて
ツヨシ君に手渡された!
その瞬間を僕は今でもはっきりと憶えている。
まるで、矢吹ジョーと力石が試合の後、握手をしようとしたが、その手と手がすり抜けてしまったような・・・・まさにそんなタイミングだった・・・・
それ以来、僕は『ツヨシ』という名前の人間に出会うたび、劣等感を感じる人間になってしまった。一生消える事の無い傷を負ってしまったのである。「君は強しで僕は弱し」そんな言葉が頭の中をグルグルと回ってしまうのである・・・
それから何年か経ったある日、僕の母親もその時の事を憶えていたらしく僕にこう言った
「あの時は我が息子ながら情けなかった・・・」
本当に泣きそうになった。